相続手続き事例4.


大邱広域市 中区庁
母親(本来日本国籍、1955年日本へ帰化)の、難易度の高い相続手続用の韓国・除籍謄本取り寄せ、「国籍喪失申告」に依る”無縁故戸籍”の解除。香川県のI司法書士事務所からの依頼。
初日
香川県のI司法書士事務所からファクス送信による書類確認の後、電話にて依頼を受ける。
伺ったところ、司法書士事務所への依頼者(日本国籍)の母親(本来は日本国籍)が他界し遺産相続手続きに入ったのだが、1943年7月に朝鮮人男性と婚姻し、1955年に日本へ帰化するまでの間の韓国戸籍を取り寄せて翻訳文を付けて欲しい、とのこと。
資料を確認したところ韓国の本籍は日韓併合時の日本式地名表記しか分からない、被相続人の夫の名前も創氏改名時の日本式氏名しか分からない、とのこと。
早速、司法書士事務所宛に、取り寄せに必要な事項を記した説明書と委任状の用紙、同日本語翻訳文をお送りする。
90日目
依頼者より取り寄せに必要な書類と委任状が到着。
本籍「大邱府 達城町 〇〇番地」は、「大邱廣域市 中區 達城洞 〇〇番地」と推測できるし、名前「弓長 〇〇(仮名)」は「張 〇〇」と推測できるので、そのように申請する。
被相続人の登録基準地の大邱廣域市 中區庁宛に、被相続人の子の委任状を添付して、被相続人の全ての除籍謄本と家族関係登録証明書(5種類)の取り寄せの手続きをする。
108日目
大邱廣域市 中區庁より被相続人の全ての除籍謄本が到着。家族関係登録証明書は送られて来ない。「無縁故戸籍」であるからだと思われる。「国籍喪失申告」は済んでいない。
直ちに、「国籍喪失申告」に必要な書類一式を依頼者にお送りする。
118日目
書類が揃ったので「国籍喪失申告」の手続きをする。
141日目
「国籍喪失申告」が無事受理されて、「無縁故戸籍」が解除されることによって新たに作成された家族関係登録簿の各種証明書が到着。
依頼者より範囲指定のあった翻訳文を作成して一緒にお送りする。依頼完了。
☆相続手続用の除籍謄本等は以下の通り送られて来た。
◇除籍謄本
①本籍:大邱廣域市 中區 達城洞 〇〇番地
戸主:被相続人の義父 子:被相続人の夫 子の妻:被相続人
表紙横書き1頁、表紙以外縦書き5頁
※①から②へ再製
②本籍:大邱廣域市 中區 達城洞 〇〇番地
戸主:被相続人の義父 子:被相続人の夫 子の妻:被相続人 横書き9頁
※戸籍制度廃止(2008.1.1)により抹消
◇家族関係登録証明書(国籍喪失により“抹消”された被相続人のもの)
1.基本証明書(詳細)
2.婚姻関係証明書(詳細)
3.家族関係証明書(詳細)
4.入養“養子縁組”関係証明書(詳細)
5.親養子入養“特別養子縁組”関係証明書(詳細)
※2016.11.30、法改正により「家族関係登録証明書」は、従来と違って5種類の証明書がそれぞれ「一般証明書」「詳細証明書」「特定証明書」に改正され、又これに伴って申請書様式も改正されました。
「一般証明書」には現在事項のみ記載、「詳細証明書」には現在・過去・訂正履歴を記載、「特定証明書」には申請人が選択した内容が記載されます。
所長雑感
被相続人の除籍謄本等を取り寄せるにあたり、日本の戸籍謄本上の記録である本籍「大邱府 達城町 〇〇番地」は、幸いにも類似しており「大邱廣域市 中區 達城洞 〇〇番地」と推測でき、創氏改名時の日本式名字である名前「弓長 〇〇(仮名)」は「張 〇〇」と推測できるので、それで申請しました。結果として推測が的中しました。
「国籍喪失申告」により“縁故”が生じたので「無縁故戸籍」は解除され、該当者の家族関係登録簿が作成されました。
日韓併合時に朝鮮人男性と婚姻した日本人女性は、終戦(1945.8.15)後に日本国籍が回復することはありませんでした。事例の被相続人は、1955年に帰化申請により日本国籍を回復しております。
1986年以降に日本国籍を取得した人の韓国籍喪失の除籍処理は、韓国政府が日本政府からの連絡を受けて一括処理しており、個別に「国籍喪失申告」をする必要はありません。
ところが、それ以前に帰化した人に関しては、本人が韓国に「国籍喪失申告」していない限り除籍処理されていません。
相続登記に際して法務局から「国籍喪失申告」をするよう指示があれば、当然に従う必要があります。
「国籍喪失申告」を速く済ませて、その事実が記載された家族関係登録証明書を入手したい方は、ぜひ当事務所にご依頼ください。