韓国では「金海金氏」が約445万6千人と最も多い。その理由は?

「本」欄に漢字で記載された「金海」
韓国では「同姓同本」と言う概念があります。これは、姓と本貫(始祖の出身地のことで“本”とも言う)が同じという意味で、「同姓」のみの場合と違って「同姓同本」の親族は同族意識がとても強く「宗親会」「大宗会」と言う組織も存在します。正に韓国の歴史・文化です。
法律面では、戸籍や家族関係登録簿に「本」欄があります。「本」の地名(例:金海)は漢字で記載されています。
人口約5千100万人(全て2015年の統計)の韓国で人口の多い姓トップスリーは①金氏約1,068万9千人②李氏約730万6千人③朴氏約419万2千人です。
「姓氏・本貫」別人口トップスリーは①「金海金氏」約445万6000人②「密陽朴氏」約316万8千人③「全州李氏」263万1千人です。
三者とも王族血統の流れです。2位の「密陽朴氏」は新羅建国者の朴赫居世の子孫に当たります。3位の「全州李氏」は朝鮮を建国した太祖・李成桂の流れです。
では、1位の「金海金氏」は、どうして約445万6000人もいるのでしょうか?
まず、最も早い時期に登場した金氏系列という点が主な原因に挙げられます。“三国遺事”によると、金海金氏の始祖は駕洛国建国の主役である金首露王で、この王の即位年は西暦42年です。早い時期に登場して一般庶民より裕福に暮らしたので子孫繁栄したということでしょうか。
また、1909年、日本が日韓併合直前に施行した「民籍法」もこれに関連していると言えます。過去の朝鮮人の身分と家族関係を体系的に登録することになり、姓氏が無かった人々もすべて姓と本貫を持つことになりました。
この過程で、当時身分が低かった人々は自分が仕えた両班の姓と本貫に従ったり、一部の両班は使用人を自分の姓と本貫に登録してくれたりもしたそうです。
この時、認知度が高かった「金海金氏」のような巨大姓氏は、自然に多くの登録者を確保することになり、これが金海金氏の人口の爆発的増加に一役買ったという分析も出ています。
【注目点】
朝鮮時代は厳しい封建的身分制度があり全人口の約4割は“奴婢階層”で当然に姓が無かったと言われています。
現在「金海金氏」であっても、元々の「金海金氏」と、姓と本貫が無い低い身分だったのに受け入れて貰った「金海金氏」がいることを知っておきましょう。「金海金氏」、懐が深いですね!
そして「密陽朴氏」「全州李氏」の人口が多いのも同じような理由かも知れませんね。
了。
【地名について】
金海(김해):慶尚南道 金海市
密陽(밀양):慶尚南道 密陽市
全州(전주):全北特別自治道 全州市